ときには真珠のように
「ときには真珠のように」は、文庫版ブラックジャック1巻に掲載されている。
ある日、ブラックジャックの家にカルシウムの鞘に包まれた一本のメスが届けられた。それは昔ブラックジャックが大けがをしたときに彼を救った恩人、本間丈太郎からのものだった。本間丈太郎は彼を手術したときに、メスを一本体内に残したまま手術を終えてしまったのだ。本間はそのことを長い間隠し続け、7年後に取りだしたときにはメスはカルシウムに包まれて姿を現したのである。
ブラックジャックはすぐに彼のもとへ向かい、死期が迫る彼の手術を行うことになった。しかし本間を救うことはできなかった。天才外科医といわれている彼だが、最も救いたかった人を救うことができなかったのである。自分の恩人には生きておいてほしい。そう思うのは誰しも同じである。悲嘆にくれる彼に本間の声が語りかける。「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね…。」人間を含めた生きもの全ては、いつかは必ず死ぬものである。医療が発達しても、それを覆すことはできない。医療ができることは、人間の死期を遅らせるということだけであり、助けたい人を永遠に助け続けることはできないのである。
人間は自然の摂理に挑戦し続けているし、それは多くの場面で功を奏しているといえる。しかし、完全に支配することはできない。それをしようとするのは、自然に対する冒涜であると言われてしまうかもしれない。