医者はどこだ!
「医者はどこだ!」は文庫版ブラックジャック第一巻に掲載されている。
大金持ちで権力があれば、どんなことをしても許されるのだろうか。もしそうであるなら、この世界はとても生きにくく、生きることに喜びを見出すことはとても難しくなる。金を稼ぐことが全ての人の生きがいになり、面白みのない世界になってしまうだろう。
今の世の中がそのような世界であるとは思いたくはない。しかしそういう生き方をしている人間がいることも事実である。だからこそ世の中は面白いともいえるが、多くの人はそのような人生は望まないだろう。
この物語では金に物を言わせ、善良な人間を犠牲にして自分の息子「アクド」を救おうとする父親「ニクラ」が登場する。息子を思う気持ちはとても一途で人間臭く、いびつなものは存在しないかのように思われる。しかし彼はそのための方法を間違えた。裁判官を買収して良き人間を陥れ、自分の息子が助かるための道具にしてしまった。ブラックジャックはその人間を許さなかった。自分の評価を下げることなく、また世間一般には知られない方法で生贄とされていた「デビイ」を救ったのである。
彼の考え方に賛同できるか?と問われれば、賛同できるという人もできないという人もいるだろう。確実に言えることは、ブラックジャックはただ医者としての使命感から人間を治療することだけを考えるのではなく、世の中で本当に正しいといわれることをただ実行する。ということである。もしブラックジャックが言いつけられたとおりにデビイを犠牲にしてアクドを治療するのであれば、このキャラクターの人間愛は伝わることはなかったであろう。